Katayama Takatoshi Weblog
東京奇譚集
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昨日は病院で一日中検査。
私は若い頃の無理がたたって19才の頃から定期的に病院にかかっている。「10年以内に癌にかかるリスクは50パーセントです。1年に1度検査してください。」と言われたのが20年前。それから1度もしていなかったが、新薬の治験があるというので、それなら事実上タダで検査できるだろうと思って申し込んだ。

看護師がいかにもめんどくさそうに検査の手順を説明をする。『こんなめんどうな検査をどうしてするのか』と思っていることがありありと伺えるようなイヤな感じだ。たぶん何か嫌なことがあって機嫌が悪いのだ。
こういう場合は質問に対して「はい、いいえ」で簡潔に答えておくに限る。

「今までに大きな病気をしたことはありますか?」
「いいえ」

「(専門用語)〜にかかったことはありますか?」
「(わからなくてもとりあえず)いいえ」 

さわらぬ神にたたりなしである。

待ち時間が長いので一ヶ月ほど前に買ってあった村上春樹の「東京奇譚集」の文庫を持って行く。
読み始めたら止まらない。けっこういい話。好き嫌いはともかく、この人はやっぱり力があるのだなあ、と再認識する。

「観察して、観察して、更に観察して、判断をできるだけあとまわしにするのが、正しい小説家のありかたなんだ。」

「職業というのは本来は愛の行為であるべきなんだ。便宜的な結婚みたいなものじゃなくて」

などという言葉が深く自分の中に根を下ろす。
ちょうど読み終えたところでようやく検査開始。

医者が画面を見ながらいろいろ聞いてくる。
「今までに手術したことはありませんか?」
 「いいえ」
「盲腸もない?」
 「(くどいな)ありません」
「あれえ?」
 「何?」「何ですか?」
「……」「おかしいな」
 「え?(なにが?)」
「手術してない?」
 「してません」「なぜですか?」
「癒着が…。」
 「はい?」
「何か炎症があって自己治癒した後みたいですねえ…」
「たぶん自分でも気づかないうちに大きな潰瘍ができていてそれが自然に治ったのだと思います。」
 「はあ、そうですか」

そういわれてみれば、血を吐いたり、下血したりということは今までに何度かあった。そのくらいはたいしたことではないと思っていたが、自分が思っていたよりも大きな炎症があったのかもしれない。

検査の後に元看護師の治験コーディネーターの方が今後の予定を説明してくれた。ものすごく親切でやさしい。もし自分が弱っている病人だったら惚れてしまうかもしれない。月に1度この人に会えるのが楽しみになってきた。1年後に結果を見るためにまた検査をするなんて嫌だからその前に途中下車してしまおうかな、なんてずるいことが頭をよぎっていたが、この人をがっかりさせるのは忍びないので最後までしっかりおつとめしようと思う。

検査薬の副作用のめまいが治まってから家に帰った。
そしてふと家の本棚を見ると「東京奇譚集」の単行本が…。
ああ、…またか。
数年前に買って、いつか読むつもりで忘れていたのだ。
それにしてもどうして今まで目につかなかったのだろう?
by katayama_t | 2010-02-25 06:33 | Life
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記録すること。すべて過ぎ去ってしまう前に。
by katayama_t
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