Katayama Takatoshi Weblog
被災地は未だ有事だという現実
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先日、11日から12日にかけて被災地を取材してきたフリーライターの今一生さんの被災地報告会を開催した。ちょうど東京へ来ていたフェアトレード東北代表の布施さんも飛び入りで参加して、現場の生の声を聞く機会に恵まれた。

テレビや新聞では復興ムードの報道が目立ち、明るい兆しが見えてきているように感じるが、実際には、まだほとんど手つかずのところも多く、復興などいつになることか分からない状態だという。今さん自身、取材に訪れた時には、地震から1ヶ月経ったし、もうずいぶん落ち着いたのだろうと思って現地入りしたので実際の惨状を目のあたりにして驚いたのだそうだ。

報告会では、被災地の生々しい写真を示しながら、鼻を突く臭気や、砂埃、蔓延する感染症など、その場に立たなければ分からない実際の様子を紹介しながら人々の反応や役所の対応、また、現地NPOの活動などを紹介して頂いた。

そして会場では、よくある赤十字への義援金ではなく、今さんからの提案で、フェアトレード東北への支援金や支援物資という形で受付をすることになった。私も長くNPOに関わってきたので小回りの利かない大きな組織へ義援金を送ることには抵抗があったが、「フェアトレード東北」に1点集中で送るのにも若干の逡巡があった。今さんの懇意にしているNPOというだけの理由だったら、それはまずかろうと思ったのだ。しかし、どこに送れば良いのか私には皆目見当も付かず、今さんを信じるしかなかった。最終的にOKしたのは、ほとんど賭けだった。

結果は大正解。公的機関は孤立した被災者相手にはほとんど機能せず、頼れるのは小さなNPOや個人のボランティアだけなのだが、数あるNPOの中でもフェアトレード東北の活動は被災者への個別の対応ができている希有な存在なのだということが、話を聞いていてよく理解できた。布施さん自身も家が流された被災者の身でありながら、他の被災者の為に身を粉にして働いている。そして、いつだってどこだってそうなのだが、素晴らしい活動をしている組織は総じて貧乏だ。自治体や大きな避難所には物資があふれ、倉庫に山積みになっているが、小さな避難所や、孤立した被災者には物資が行き渡らず、困窮している。そういう被災者に手をさしのべることができるのは、指揮命令系統がしっかりしている「組織」ではなく、いつだって心ある「個人」なのだ。

先日、まだ1回も入浴の機会がない避難所が5%、替えの下着がない避難所は47%あるという新聞報道があったが、これは調査できた分(40%以下)だけだから、実際にはその何倍もの人数がいるだろう。入浴サービスや炊き出しがあっても、そこまで行くための手段を持っていない方はたくさんいるに違いない。街に住んでいるとこれは理解されにくいが、田舎では車が無いと移動するのは不可能に近い。
http://bit.ly/heVGzF

また、見過ごされがちなのは、障害者や疾病者、要介護者などマイノリティの方々。こういう方々をきめ細かく支援するには、自治体や大きなNPO,NGOでは限界がある。今日の毎日新聞の記事に「食物アレルギーへの対応が遅れていて、アレルギーを持つ被災者は食べられるものが無く、命の危険もある」という内容の記事が載っていたが、実際にこういう問題に対応しているのも、財力のない小さなNPOである。
http://bit.ly/hxBdgI

それにしても、会場となったデザイン学科の学生の参加が少なく、質疑応答でも手が挙がらなかったのは残念というほかない。こういうことにきちんと向き合えるかどうかが、デザインやアートには最も必要な事だから。「おとなしい」ということとはまた別の次元で、意思表示をしなければならないことはある。

最後に今日の毎日新聞に載っていた野田秀樹さんの言葉を引用しておく。「…大震災と原発事故という人災と、これからどうつきあっていくのか。私自身、この時代に生きる表現者として、資質を問われていると思う。」
http://bit.ly/edGe78

そう、私たちは今、表現者としての資質を問われているのだ。人間としての…かもしれないが。
by katayama_t | 2011-04-24 23:24 | Social | Trackback | Comments(2)
Commented by 近藤早利 at 2011-04-25 19:48 x
以前、羽鳥操さんのご紹介でうかがって、はりかけの床の断熱材を踏み抜いた近藤です。その節は、m(_ _)m。
貴重な情報をありがとうございました。
以前から、義援金なり物的支援なりをしたくても、大組織では滞留してしまうのではと思っていたので、とてもよい情報をいただきました。
早速、寄付金を送金させていただきました。
わたしの、いすみの家は海から5分のため、なくなってしまうかと思いましたが、大丈夫でした。連休には数日滞在したいと思っていますので、その折りに、また、見学させていただくかもしれません。
取り急ぎ!
Commented by katayama_t at 2011-06-04 22:37
近藤さん、その節はありがとうございました。また、近くに来た折には立ち寄ってください。
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