Katayama Takatoshi Weblog
伝道タクシーと丸山富之展
今日のタクシーはいつもと違う意味で強烈だった。私が乗るなり布教活動を始めたのだ。
英語まじりの韓国語で言うには、
韓国にはたくさんの教会があるし、たくさんのクリスチャンがいる。この10年くらいでとても増えた、私もクリスチャンになって7年になるが、クリスチャンになってからパワーを得ることができた、すばらしいことだ。と言いながら分厚いバイブルを開いて見せてくれた(おいおい、いつも持ち歩いてるのか?)。次に教会パンフレットを見せて、ぜひおまえも行けと身振り手振りを交えながら言う。もちろん運転中だからハンドルからは手を離すし、後ろを振り向くしで危なくてしょうがない。へたに反論すると何されるか分からないような雰囲気なので適当に相づちを打っていたらそのおじさんだんだん興奮してきてしまいには賛美歌を朗々と歌い始めた。
…やれやれこれだから宗教は嫌われるのだ。

早く駅に着かないか、と思っていたが、おじさん気持ちよく歌っているので運転が遅い…。だんだんエスカレートする賛美歌をしばらく聞かされながら、はて?この光景には既視感があるぞ…と思い当たった。もう15年以上も昔のことだが、台湾を一人で旅行したことがある。台湾に住んでいる旧部族のところをヒッチハイクしながら訪ね歩いたのだが、山の民パイワン族の部族長と知り合いになり、いろいろとお世話になった。彼は日本統治時代に学校教育を受けたので、日本語を流暢に話す。あるとき日本統治時代からその後中国人が入ってきた頃の話をしていたときに、如何に中国人が酷かったかということをとうとうと話し出した、自分たちをバカにして嘘ばかりつくし使うだけ使って約束したお金は払わないし本当に酷かった、それに比べて日本人はぜったいに嘘はつかなかったし約束は必ず守ったし、何よりも武士道精神を教えてくれた。私には日本人としてのプライドがあった。などと話しながら次第に熱を帯びてきて最後には真っ赤な顔をしてつばを飛ばしながら「天皇陛下万歳!!」と叫んだのだ。これにはちょっとびびった。こんなところに大和魂を持ったかつての日本人がまだいたのだと思って本当に驚いた。何か自分よりも大きくて強いものに自分を重ね合わせるというのはこんなふうに気分が高揚して気持ちの良いものらしい。対象が宗教だったり国だったり会社だったり人種だったりするだけで、中身は同じだ。中でも宗教はそれを人に押しつけるからタチが悪い、しかも本人は良い行いをしていると信じてるし…。

さて、そうこうしているうちに駅についた。今日はDaegu(大邱)という違う街で丸山富之さんという彫刻家が個展をやっているとの情報が入ったので行ってみることにしたのだ。丸山さんは私の大学の先輩で、なんと日本では私の家のすぐ近くに住んでいる。が、実は今までタダの一度も話をしたことがないし、大学を卒業してからはたぶん一度もお会いしてない。それがひょんなことから私の妻が知り合いになって先日個展のDMを貰ってきたらしい。メールで受け取った情報は電話番号と住所と画廊の名前のみだったのでホームページが無いか調べてみたが、無い。せめて地図がほしいところだがしかたがない。まず画廊に電話して今日開いていることを確認し、最寄り駅はDaeguだというのでとりあえずDaegu駅まで行き、駅前のtourist info.で地図をもらい、電話で詳しい場所を聞いてもらい、なんとか行くことができた。ふぅ。

今朝家を出てから約3時間半、ようやくたどりついた画廊は人通りもまばらな街の外れにあったが、画廊自体はシンプルでとても良い画廊だった。広い空間、高い天井、コンクリート打ちっぱなしの床。作品もちょっとそっけない感じがこの空間に良く合っていた。
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一通り作品を観てから画廊のキュレーターとしばらく韓国のアートシーンについて話をし、名刺を交換して帰ってきたが、画廊から駅に向かう帰りのタクシーでKTX(新幹線)に乗りたいんだ、と言ったら来るときに着いた駅とは違う駅に連れて行かれた。Dongdaegu(東大邱)。そうかKTXの駅はDaegu(大邱)ではないのだ。行きに鈍行しかないと言われたのはその時間に無いということかと思っていたが行き先がDaegu駅だったからなのだ。おかげで帰りはKTXに乗ることができて行きよりもずっと早く帰り着いた。Daejeon(大田)から家に帰るタクシーはノーマルだった。ノーマルとはあくまでも韓国の基準で、ということだが…。
by katayama_t | 2006-11-25 22:19 | Social | Trackback | Comments(1)
Commented by BJ at 2014-02-25 21:23 x
とみさん、元気なのか(^-^)/
そのうち武蔵野美術大学に遊びに行こうかな

とみさんの、毎日のお弁当に入っていた竹輪の穴に赤いウインナーを詰めたおかずは生涯忘れない.
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by katayama_t
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