今日は芸大の卒展に行った。 彫刻はここ数年とてもレベルが落ちているという話を聞いていたのでどんなものだろうと思っていたのだが、それほど変わっていないのでは?と思った。 ただ、昔は大学院と保存修復の作品が同じ空間に展示してあったので、もっとたくさん作品があるような印象ではあった。 学部の卒展はもともとそれほどレベルが高くない。 でも少し質は変わったな、とは思う。一言でいうと「具象」が多い。それも造形的、構築的な作品ではなく、ちょっとグロテスクなイメージを持たせた作品。 空間や形の問題よりも人の感情を動かそうとしている作品が多いという印象を受けた。 作品というのは見る人の持っている文化によって見方が変わるものだが、感情にうったえる作品は特に人によって大きく見え方が変わる。似たような感性を持った人には理解しやすいが、そうでない人にはただ気持ち悪いだけということになりかねない。そこを超えて普遍性を獲得するには、やはり造形的な強度を持った「形」が必要になるのだろう。「美(神)」というのはそこに宿るのだ。 私たちがキリスト教徒でもないのにミケランジェロの「ピエタ」に感動できるのは、キリスト教徒にしか理解できない価値を超えてそこに造形的な強度をもった普遍的な「形の美」があるからだ。 「美」の条件に普遍性は欠かせない。 ざっと各科を見た後、都美館を後にして次に藝大内の展示を見に行った。こちらは大学院の展示。学部と比べるとぐっとレベルが上がるのがわかる。たった2年でこれほどレベルに差があるというのはどういうことなのだろう? 腕が上がるというよりは意識の差なのか?と考えた。 「プロフェッショナル」というのは、いつからそうなるのか、と考えてみると自分がそう意識したときからなのではないか、と思う。大学で課題作品を作って提出するということではなく、自分が作るものは常に世界に向けて発信しているのだ、と意識し、どこに出しても通用するものを作ろうとすることで、プロか否かは決まるという気がする。意識は一瞬で変えられる。大学院は2年もあって授業はほとんどない、その間に意識の変化があっても不思議ではないだろう。 大学美術館を見てから最後に彫刻棟の展示を見た。卒業してから初めて彫刻棟へ足を踏み入れたが、20年近く離れていたとは思えないほど違和感がないのに自分でも驚いた。ここにいた時間というのは十代の終わりから二十代の前半という、いろいろなことを学びうる人生の中でも重要な時期だ。その時期に過ごした場所というのはこんなにも強く人の心に刻み込まれるものなのか、と何の抵抗もなく彫刻棟になじんでいる自分を見て思った。
by katayama_t
| 2008-02-22 22:34
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