Katayama Takatoshi Weblog
カテゴリ:Life( 411 )
日本語が亡びるとき:水村美苗
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著者にファンレターを書きたいと思ったのは初めてだ。知的で過激な文章。晴れ晴れとしたこの読後感……。「読む快楽を与えない文章は文章ではない」と言い切るこの清々しさ。

子どもの頃から評論を読むのが苦手だった。正直言って大学で読まなければならない「論文」もまともに読み切ったことがない。読んだ端から忘れていき、ちっとも頭に入らない。かといって小説も最近のあまりに小説くさいのは食傷気味。思わせぶりな書き出しだけでもううんざりである。

この本は堂々たる評論だが、力のある小説家が評論を書くとこうも読ませるものかと驚いた。抑制が効いていて、言いたいことはさらりと過激にユーモアを込めてしっかりと言う。文章がうまいというのはこういうことを言うのだよな、と改めて思った。

久しぶりに知的で読む快楽を与えてくれる日本語を読みたくなった。漱石でも読もうかしら。
by katayama_t | 2015-12-14 21:07 | Life
人の多面性について
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桐野夏生のグロテスクを読んだ後、じわじわとダメージが来ていて、そのもやもやした感じを晴らすべく続けざまに「東電OL殺人事件」を読んだ。これは、小説の題材になった事件を描いたノンフィクションだ。

最初は、感動の押し売りみたいな陳腐でつまらぬ文章だなと思いながら読んでいたが、いつの間にか引き込まれていった。事実の力はすごい。小説は人が作ったものなので矛盾は無いが、実際の人間は矛盾だらけだ。人の行動をどんなに的確に理由付けしてみたところで、それでもなお、「どうして?」という思いは残る。おそらく人間には当の本人にも分からない衝動というものがあって、それがその人の行動を決定づけているのだろう。どんなに想像力を働かせてみたところで結局は「解らなさ」が残る。

「人間は黒か白かだけで判断できるほど生やさしいものではない。だからこそ人間は面白いのだ。」という一文が端的に示しているように、人間は誰でも多面体だ。
聖人扱いされている人物でも人間である以上実際には様々な面があるはずで、ある面から見てみれば決して褒められた人間ではないだろう。それを1つの面だけ強調して理解しようとするのは、人々の願望であって、結果としてその人を平板なつまらぬ人物に見せているのではないだろうか。

事件被害者の東電OLは父親を過度に尊敬するあまり、父の死がその後の転落の引き金になったという見方が有力だ。だとしたら、彼女は最後まで子どものままで自分の人生を生きていなかったのではないか。父の嫌な面には目をつむり尊敬できる面だけを強調して見ていたのではないか。しかし、立派なだけの人間などいない。人には様々な面がある。そのことを了解してなおかつ人は面白いと思えることが大人になるということなのかもしれない。

今日、葉山の美術館に行く道すがらそんな事を考えていた。美術館では若林奮展をやっていて、美術館の外では鳶が輪を描いて飛んでいた。人間の欲の世界とはまったくかけ離れた静謐な時間が流れていたが、素晴らしい美術家といえども美術館で見せているのはその人物のごく限られた一面でしかないのだろう。
by katayama_t | 2015-12-10 23:54 | Life
猫とお酒とストーブの火
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たくさんの人を相手に仕事をするととても消耗する。人の感情や意志が自分に向かってくる感じがとてもキツイことがある。まともに受け止めなければ良いのかもしれないが、人を相手にしながらそこに関係性が無いのなら何を話しても会話は成立せずまったく無意味だと思う。とはいえキツイ。
しばらく緊張がほぐれずもう人に会いたくない感じになるが、猫は別だ。猫は自由だ。自由だから重荷にならない。自由に家に出入りして、道路を走って渡り、時々鳥を捕まえて食べる。とても幸せそうだ。道路を渡るのはとても心配で、車に轢かれたらショックで立ち直れそうにないが、それでも、この自由を束縛してはいけないと思う。

人間は猫とお酒とストーブの火があればとても幸福になれる。
by katayama_t | 2015-12-01 22:51 | Life
火のある暮らしとやきものとの関係
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土曜日に野焼きをした直後に、学園の子どもたちから「またやりたい」の声があがった。またやりたいと言われても、1日がかりで大変な労力がかかるのでそう簡単ではないが、一度やると次はもっとこうしたいという展望が開けてすぐにまたやりたくなる気持ちもよく分かる。

野焼きでなく、もっと簡単にできる方法は無いかと考えてみたら、我が家では毎日風呂釜やストーブで火を燃やしているので、やろうと思えばその中でやきものを作ることができるのではないかと思い当たった。普通の家では薪ストーブや薪の風呂釜は無いかもしれないが、それでも工夫すれば七輪などでも焼けるはずだ。

しかし、ある程度の数を一度に焼こうと思ったら、一番効率の良いのは結局陶芸用の窯を作ることではないだろうか。いつかはやらねばと思っていたが、そろそろ1200度以上温度が上げられるような窯の設計を考えてみるか……。

こうして家の完成がまた遠のいていく。
by katayama_t | 2015-11-30 21:24 | Life
大切な時間
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会期中2回目の『塚本誠二郎 展』に行った。初日のオープニングパーティでいろいろとお話をさせてもらって、「今度お宅ににおじゃまさせてもらって良いですか?」と聞いて快諾されたのだが、連絡先を聞かなかったので、今日はあらためて連絡先を聞きに行った。

塚本さんとはその昔巷房で出会ってからずっとファンでありつづけているが、今までに3回くらいしか会ったことが無い。巷房で個展を2年に1回やられているので、3回会ったということは出会ってから少なくとも6年は経っている(いやたぶん10年くらい経っているが)ことになるが、逆に言えばそれだけの年月でたった3回しか会えていないということだ。感性の似ている人と出会うのは奇跡的なことなので、そういう関係はできるだけ大切にしたいと思うが、会う機会が自然に訪れないのならこちらから出向くしかない。というわけで春になったらお酒を持って遊びに行こうと思う。

とは言っても、それほど打ち解けた仲でもないので、実際に会っても緊張して何を話せば良いのか分からないが、お酒があれば大丈夫。今日も巷房で出された美味しいカルバドスのおかげでいろいろと楽しい話ができた(私は塚本さん同様生きるためにお酒が必要な人間なのだ)。

彫刻の話、陶芸の話などをしながら、過去の思いが蘇ってきて、私が「最初に陶芸に興味を持ったのは18歳か19歳の頃に渋谷の松濤美術館で…」と言いかけたら、塚本さんが「辻晋堂!」と口を挟んだ。
「!!!!!」
あの展覧会を観たという人に人生で初めて出会い、感激のあまり絶句したが、それからは、あれはとても良い展覧会だったという話で盛り上がり、そのままその場にいた人たちで近くの台湾料理の店へ繰り出した。とりとめもなく様々な方面に飛ぶ話の輪に入りながら、この瞬間もいつか遠い過去になるのだなという思いを心に刻んだ。なんだかもう好きな人としか会いたくないし、好きな人と会う時間をよりいっそう大切にしたいと思う。
by katayama_t | 2015-11-27 23:59 | Life
車を車検に出すなどした
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もらった軽トラックの車検が知らないうちに切れていた。
車検が切れた車は単なる鉄くず。車検を通さねばならないが、余分なお金はかけたく無いので自分で車検に出してみることにした。

一応ネットで調べてみたのだが、もともと調べごとが嫌いな質なのでちっとも頭に入らない。まあ、なんとかなるだろうと思って、役場で仮ナンバーを発行してもらって何の整備もせずにダメもとで軽自動車検査協会まで車を走らせた。どの窓口に行けば良いのかもわからず、うろうろしていると、すぐに窓口のおねえさんに声を掛けられて、いろいろと教えてくれた。何も知らない素人が行くともっと冷たい対応をされるのかと思っていたが、どの窓口に行っても皆親切で素晴らしく対応が良い。どこかの役場とは大違いである。

球切れくらいはチェックしてから来るべきだったかなあ、不具合が見つかりませんように、とハラハラしながら進んでいくと、ウインドウウォッシャー液が出ないことが判明。

まあ、そううまく行くわけ無いよな……。

その日のうちに修理して持ってくればタダで、後日になると手数料の1400円がもう1度かかってしまうとのこと。
モーター音はしているので液が切れているだけだろうと思い、車検場の自販機で南アルプス天然水を買ってウォッシャー液のタンクに入れた。スイッチを押すと勢いよく液が出てきて無事に車検終了。車検にかかった費用は自賠責保険料26370円+重量税6600円+手数料1400円+用紙30円=34400円。それに車検切れだったので仮ナンバー代金が750円。それを足しても35150円。安いじゃないか……。

お金がないと何でも自分でやるようになるものだ。
by katayama_t | 2015-11-26 21:49 | Life
印鑑というストレス
印鑑というものに何か合理的な意味があるのか疑問だが、役所ではいまだに印鑑がないと何の手続きもできない。

先日、車検が切れた軽自動車の仮ナンバーを発行してもらおうと思って、わざわざ時間を作って役所を訪ねていったのだが、印鑑が必要と言われてすごすごと帰ってきた。あんな何の証明にもならないようなもののために時間を無駄にしたのが実に腹立たしいが、自分の力ではどうにもならないことには従うしかない。しかし、このまま引き下がるのも癪である。次に行く時には何らかの反撃をしたい。

印鑑を忘れないためにはいつも携帯しておけば良いわけだが、普段使わないものなので携帯するにはできるだけ小さくてかさばらないもののほうが良い。

ということで印鑑を小さく加工することにした。必要部分を3mmくらいに薄くスライスして、それをiPhoneに貼り付けて……、などとも考えたのだが、実用性を考慮して、柄の部分を短く切って穴を開けてキーホルダーにした。もっと印鑑の無意味さを強調する挑戦的なデザインにしたい気もするが、役所のおじさんと戦ってもしかたがないのでやめた。本当の敵はもっと強大で実体のないものだ。

車の鍵に取り付けたので、これでこれからはまず印鑑を忘れることはない。そして鍵を落としても持ち主が分かるので一石二鳥である。
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by katayama_t | 2015-11-24 16:03 | Life
休日の忙しさよ
休日は忙しい。休日が仕事日で平日が休息日のような気さえする。

今日は朝から荒牧さんと堂園さんが来てピザ作りと調理オーブンの実験をしていたので特に忙しかった。

朝8時に嶋村金物店に行って雨どいの部材を購入し、2人を駅まで迎えに行って、皆でピザの準備。トマトソースを作り、ピザ生地を作り、野菜類を切って、窯に火を入れた。窯を温めている間に、堂園さんは猫に支配され、荒牧さんは火力調節機能を追加したストーブに火を入れてキノコの炒め物を作っていた。
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忙しすぎてピザの写真もほとんど撮っていないが、これは撮らねばと思って唯一撮ったのがこれ。本日最強の4種のチーズ乗せピザ!
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何が最強かというと、このピザはとってもワインがすすむのである! ワインが無ければ食べられないと言っても良い。

お腹も一杯になったところで、猫をあやしながら3人でストーブ研究に関する真剣な討議をして、その後私は傾きつつある陽光を惜しむように玄関の屋根がけ作業。玄関前のスペースを広く確保するため、柱を立てずに斜め材でひさしを作ろうという計画。macとillustratorのおかげでミリ単位で計算通りに寸法が決まっていくのが小気味良い。
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明日は雨予報だが、屋根がけ作業がしたくて我慢できないので小雨なら決行しようと思う。家作りはとても楽しい。
by katayama_t | 2015-11-22 21:55 | Life
いやなことはやらない。
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「アルバイトをするために面接があって、しかも落ちることもある」ということを最近、現役大学生から聞かされた。どんな特殊なアルバイトかと思って「モデルか何かのバイト?」と聞いたら、いたって普通の飲食店だと言う。そして、どんなバイトでも今はそれが普通らしい。

私が大学生の頃は、ちょうどバブル景気のまっただ中で、そんなことはあり得なかった。どこも人手不足。上野公園で1人ベンチに座っているだけで、知らないおじさんから「仕事あるよ」と声をかけられた。

あるとき、建築中のビル内装のバイトに申し込んで、現場のビルに行ったら、申し込んだ会社がどこで仕事をしているのか分からない。携帯電話など無い時代だから連絡のつけようが無い。しかたがないので入り口付近で仕事をしていたオニイサンに「○○という会社知りませんか? バイトを申し込んだんだけど、どこに行けばいいのか分からないんですよ」と声をかけると、「これだけたくさんの業者が入っているからねえ……。」「良かったらウチで働きなよ」という返事。続けて「一日いくらで申し込んだの? ウチならもっと出すよ」と言ってくる始末(笑)。「いやあ、働くと約束したんでもう少し探してみます」と言ってあちこち探して、ようやくたどり着いた現場は、やはり人手不足で、ほとんど素人のロクに溶接もできないおじさんが鉄の窓枠を溶接していた。

良い時代だったか、悪い時代だったかと問われれば、いろいろ批判はあるだろうが良い時代だったと言う他はない。毎日が実に愉快だった。もともと楽天的な性格ではあるが「人生なんとでもなる」という根拠の無い自信は、あの頃の経験が元で形成されたような気もする。「将来を悲観する」という心理状態が何のことなのか正直言ってよく分からない。だから大学を出たら当たり前に就職をすると思っている今の学生達の気持ちも、理解しようとはするけれど本当には分かっていないと思う。

最近そんな良い時代のことを、ありありと思い出させてくれる本に出会った。本のタイトルは「タワシ王子の人生ゲーム」。現在下高井戸でJAZZ KEIRINという変わった名前のうどん屋を経営している栂野さんの破天荒な自伝エッセイ。先日、出版関係の仕事をしていたマリオさんから送られてきた。どうやらマリオさんが企画を立ててこの本が作られたらしい。本には手紙が添えられており、そこには「今の若い人たちに読んで欲しい」という言葉がある。

表紙を開くとまず、目に飛び込んできたのは、

「いやなことはやらない。」
「迷ったら新しい方を選ぶ。」

という言葉。

「ああ……! これは何か自分にとても近いものがある」と思った。

著者の栂野さんは、私などとは比べようも無いほど自由に生きてこられた方で、似ているなどというのはおこがましいが、それでも、何かが似ている。それはやはり、若い頃にあの時代の空気を吸って生きてきた人が、ひょっとしたらどこかに共通して持っている鷹揚さのようなものなのかもしれない。

栂野さんは、大学を卒業後、英語もできないのに無謀にもいきなりニュージーランドでの日本語教師に応募する。所持金はたったの5万円で片道切符だったというからもうむちゃくちゃである。昨今のインターネットに多く巣くっている冷淡で野蛮な人たちから見ると人に迷惑をかけるただの身勝手なバカであり、冷笑されるのがオチだが、当時はそのくらいは笑って許容する余裕が社会にあったように思う。

今のような閉塞感が漂う社会の中で育った若い人たちが、こういう人や生き方をどう思うのか正直分からない。「今の若い人たちに読んで欲しい」というマリオさんの言葉を見たときに、この本を受け止められる人がどのくらいいるかな? と、ちょっと心配に思った。しかし、たとえ1人でも誰かの心を打つことができれば、それで良いような気もする。1人なら心当たりがある。偶然にも下高井戸に住んでいる無茶ぶりの若い女性だ。
近いうちにJAZZ KEIRINに彼女を誘って行ってみるかな。
そう思うとなんだか楽しくなってきた。



栂野のインタビュー記事
https://cakes.mu/posts/10488
by katayama_t | 2015-08-29 23:39 | Life
生活用具を自分に合わせること
先日実家から「壊れた」というのでもらってきたポットを直して使っていたが、質感がどうにも気に入らない。ステンレスの外観に施したビニールコーティングが剥がれてきていて見る度に嫌な気分になる。買った時が最も美しくて、次第にみすぼらしくなるような作り方はいかがなものかと思う。古くなったらそれなりに味や風格が出てこなければ。

このビニールコーティングを剥がせないかと、コーヒーを飲みながらむしっていたが、ますます汚くなるばかりなので、分解してサンドペーパーで磨いてしまった。
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ロゴや注意書きなどもビニールコートの下にあるので、一緒に削る。
MODERNITYというロゴが悲しい。
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プラスチック部分もペーパーをかけて洗ってから組み上げ。
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堂々たる風格(笑)。
by katayama_t | 2015-01-18 13:02 | Life


記録すること。すべて過ぎ去ってしまう前に。
by katayama_t
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