Katayama Takatoshi Weblog
友人の訃報が届いた
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周豪さんの訃報が届いた。良い作品を作り続けることが彼への最大の恩返しだと思って今までやってきたけど、少しはできていたかな。

思えば1998年3月の個展で、芳名帳に「作品が素晴らしい! 連絡をください。周豪」と書いてくれたことが、すべての始まりだった。あれがなければ画廊の企画展も、ミューザ川崎の作品設置も、モニュメント制作も、イタリアでの滞在制作もなかった。すべて周さんのおかげだ。よく私のように不義理な人間にそこまでしてくれたと思う。

周さんとは2人展を2回やって、それからもまたやりたいと何年も言われ続けてきたのをすべて断ってきた。個展に集中したかったからだ。個展でやりたいことを一通りやりきった今ならもう少し肩の力を抜いて2人展もできるかもしれないけど、タイミングというのは難しい。いつも時間の流れに裏切られる。ものごとはその気になるのを待っていたらいつだって手遅れだ。

2021年の12月の個展には上海から帰国していたので数年ぶりに来てくれた。地下の展示を観て「いやーすごいね……!」「この場所でこんなに美しい作品が観られるとは思わなかった」と言ってとても喜んでくれたことが今の自分の最大の慰めとなっている。最後に良い作品を見せることができて本当によかったと思う。

周さんはいつも率直に思ったことを言ってくれた。見にくる人におもねったような作品があると「これは気に入らない」と面と向かって言ったし、その代わり良い作品は手放しで喜んでくれた。どんな時でも発する言葉が信頼できる稀有な人だった。もうあの率直さに触れることができないのはとても淋しい。

# by katayama_t | 2023-09-25 21:28 | Life | Trackback | Comments(0)
夜明け前の道を走りながら思う
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夜明け前の道を走る
夜の海で夜光虫と戯れる
サーフィンをする
コーヒー豆を焙煎する
干し柿を作る
絵を描く……。

そういうことがとても大切。

自分を見失わないために。
世界をありのままに見るために。

そういう時間がとれないでいると自分を開いて世界とつながることができなくなる。星を見たり、鳥たちの声に耳を澄ますことができなくなる。

そして、やがて優しさが失われる。
競争をして人を打ち負かしたり、上下関係を作ったり、意地悪をするようになる。
人を信じることができなくなる。


父が病気になって「しらす」の配達ができなくなったとき、私は父を軽トラの助手席に乗せ毎朝4時半に魚市場まで配達に行った。父が作った釜揚げしらすは格別なおいしさで、それがなければ困るという魚屋が何軒かあったのだ。
まとまった在庫がなくなり、いよいよ辞めるという時には「他にいいしらす屋があったら紹介してくれ」と言われていたが、父は頭を捻りながら「いやぁ……ないなあ……。」と返していた。少量生産ですべて天日干しをしているようなしらす屋は日本中探してもなかなかないだろう。

もともと我が家は代々続く漁師だった。

朝まだ暗いうちに漁に出て早朝に獲れた魚を市場に卸す。小学生の頃、一度漁に連れて行ってもらったことがある。ただいるだけで凍えそうな船の上で、黒く冷たい海の中から網を引き上げて素手で魚やエビを引き剥がしていく様子を見て、そのあまりの過酷さに自分には漁師は無理だと思い知った。漁師をやるにはひよわすぎる、と思った。
今にして思えば、防寒着を着て、防水の分厚いグローブをつけるなどの対策をすればあそこまで過酷なことはなかっただろうが、しかし、その時の自分には、まだ暗いうちから真っ黒な海を相手に人知れず仕事を始める自分が結局は想像できなかったのだと思う。

私が中学生になった頃、父は船を降りて干物屋を始めた。海の仕事が過酷だったからではなく、魚が獲れなくなってきたからだ。大資本の大型漁船が大きな網で魚を一網打尽にしていく様子に父が一言「あんなことやってたら魚がいなくなっちまう……」と苦い顔で言っていたのをよく覚えている。たぶん、社会的に漁が「仕事」から「労働」に変わった頃だったのだと思う。「仕事」は生きていくために必要な様々なことで、必ずしも金銭は絡まない。私のものづくりは仕事だし、子育てや家庭菜園、料理なども仕事である。仕事は心がないとできない。「労働」はお金を得るための手段で、心がなくても可能だ。

干物屋を始めてからの父はよく働いた。漁師だった頃は天気が悪ければ休みで、暇な時間にはよくパチンコをしていたけれど、干物屋には休みがない。雨が降って天日干しができなければ、大手の干物屋の乾燥機を借りて干物を作っていた。そして、漁師だった頃と変わらず夜は早く寝て毎日早朝に魚市場へいった。

私は、そんな規則正しいストイックな生活に不平不満をまったく言わない父が不思議だった。そんな辛い生活がどうして続くのだろうとずっと思ってきたけれど、今なら少しわかる気がする。たぶん父も夜明け前の道を走ることや、暗い海を見ることが好きだったのだ。仕事だからしかたなく早起きをしていたのではなく、むしろ、日常の煩わしいことから逃れて早く寝床に入り早朝から行動することの悦楽のために仕事を理由にしていたようなところがあったのではないか、と思う。

基本的に父は楽天家で明るかった。人にも好かれた。考えてみればそういう人がいろんなことに我慢して、たとえば「家族のために……!」などとストイックに生きるはずがないのだ。好きなことだからやっていたのだと思う。

最近、朝5時過ぎに家を出て、大学に6時半頃着く生活をしている。授業も会議もない時には、早朝に海でサーフィンをする。誰もいない道や海はとても快適。今まで渋滞の道をいらいらしながら走ることでどれほど消耗していたか。早朝、まだ暗い道を走りながら亡き父のことをよく考える。ずいぶん回り道をして本来の自分に戻ってきた感じがする。いまなら漁師も悪くないと思える。

# by katayama_t | 2022-11-28 20:08 | Life | Trackback | Comments(0)
焙煎機試作3号機
前回からの続き

焙煎機試作3号機を試運転。これでもう完成形が見えるかと思ったらそう簡単には行かず。ドラムを大きくしたらモーターのトルクが不足していることがわかった。amazonで買えるようなモーターではダメそうなので、モーター製造会社「オリエンタルモーター」のwebsiteを見てみたのだが、専門用語すぎてどれを買えば良いかまったく分からず……。モーターの勉強をしないといけなくなってきた。焙煎の基本も勉強中で、これはもう終わりのない沼だ。将来はコーヒー豆の焙煎屋を開いているかもしれない。

しかし、トルクを表す単位が10個以上もあるのはいったいどうした訳だろう。その記号が何を示しているのかも分からず……。最初からなんとなくは感じていたけどこれはホントに沼。
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試作3号機で新たに購入した材料一覧

NSK(日本精工)
ミニアチュアベアリング ZZ 600番台 両側シールド形 フラット 単列 内径6mm 606ZZ
179円
https://www.monotaro.com/p/0944/2842/

モリ工業
オールステンレスパイプ 外径38mm長さ910mm 1本
2590円
https://www.monotaro.com/p/3757/0136/

ノーブランド
ステンレスパンチングメタル(SUS304) Φ3xP5 厚さ1mm幅150mm長さ701~800mm
https://www.monotaro.com/p/4033/4813/
5290円(701mmを注文)


# by katayama_t | 2022-10-27 10:25 | Trackback | Comments(0)
さようならぴゅうたろう
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昨夜、長老猫の「ぴゅうたろう」が他界した。今日は喪失感がすごい。
最後に足腰が立たなくなってから、どこにそんな力が残っていたのかと思うほどすごい勢いで階段を駆け上がり、しっかりとこちらを見て何かを言い残してから、猫穴から外へ出てそのまま息絶えた。
目から自然と涙が溢れ出てくる。
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# by katayama_t | 2022-09-23 10:15 | Life | Trackback | Comments(1)
物事を分けて考えないこと
物事を分けて考えないこと_d0094333_15251827.jpg
先日ある方から「編集者とやりとりしながら独りで文章を綴るのは何事にも代え難い魅力があります。作品づくりもそうでしょう?」と訊かれて「どうかな……?」と考え込んでしまった。確かに作品をつくることは自分にとって必要だし重要なことだけど、それだけが特別という感じはしない。食べることも飲むことも、猫を撫でることも、海に行くことも、星を見たり風を感じたりすることも、それぞれとても重要でそこに優劣をつけることができない。どれも他と代替できない魅力があるし、作品づくりだけを取り上げてその魅力を語ることには違和感がある。

美味しいものを食べること、体を清潔に保つこと、美しいものに囲まれて過ごすこと。
芸術作品を作ることが、そういう些細な日常生活よりも上に位置付けられるとしたら、芸術なんて所詮は頭でっかちの人間が生活からかけ離れた空想の中で遊んでいる余興に過ぎないのではないか。
生活とは生きることのまるごと全体である。その生活から衣食住を抜いて芸術のみに邁進するという芸術家像は、魅力的なのだろうし、そういう幻想を作品に付与することで作家に人気が出て作品が売れるということは理解できるが、自分はそういう商売にはまったく興味がない。しかし、世間が求める芸術家像は、未だにゴッホに代表されるような清貧で浮世離れした求道者を期待しているように見える。
私には、そういうこと一切に対する反発がある。

自分は、芸術やものづくりを特別視するような物言いに過剰反応している部分があるのかもしれない。芸術に限らず、自分が携わっていることを殊更に立派なことのように喧伝することには、それが何であれ反発を覚える。
「芸術はデザインとは違う」「工芸と彫刻は違う」「絵画とイラストは違う」、さらには「有名デザイナーはアーティストであってデザイナーではない」「あれは売り絵で私のは現代美術だ」「現代工芸と伝統工芸を一緒にしてもらっては困る」などなどいくらでも出てくる。それぞれがそれぞれの立場から似たものを攻撃して分断を煽ることにどんな意味があるのか。
そう問えば「他との違いを見極めることによって、そのもの固有の価値を可視化し、何をすべきか明確にする」というような答えが返ってくるのだろうが、それぞれの分野において「何をすべきである」「何をしてはいけない」なんて決まりが本当に必要だろうか。もしそうだとしたらなんて不自由なのだろうと思う。

何か事を起こす場合には、それが何であれ与えられた条件で最適解を出すということ以外に何が必要だというのだろう。作家性が求められる場合には作家性を、快適性が最重要なら快適なものを、量産が求められるのなら量産可能なシステムを考案する。あたりまえのことだ。

絵はうちの畑で採れたとうもろこし。

# by katayama_t | 2022-08-31 15:25 | Art | Trackback | Comments(0)


記録すること。すべて過ぎ去ってしまう前に。
by katayama_t
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