Katayama Takatoshi Weblog
チャベス大統領2
今ベネズエラのチャベス大統領に注目している人は多いと思う。国連の演説でブッシュ大統領を悪魔呼ばわりして、アメリカ国民の反感を買ったかと思えば案外そうでもないようで、彼が演説で読むように推奨した「ノーム・チョムスキー」の本がamazon.comでしばらく売り上げ一位を独走していたり、最近では「21世紀の社会主義」を掲げて一度民営化された石油会社や通信、電力会社を再び国営化しようとしている。アメリカ主導の経済自由化政策に真っ向から立ち向かうようだ。社会主義というと北朝鮮やかつてのソ連や中国といった独裁国家をイメージする人も多いだろう。確かにそういう危険もあるには違いない。特にベネズエラの石油を確保しておきたいアメリカやそれに追随する日本の大手メディアはそういう論調が目立つ。
http://www.afpbb.com/article/920213
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200701100022.html

でも、チャベス大統領は公正な選挙で選ばれた大統領であり、彼が大統領になってから一部の金持ちに握られていた富を再分配することで、全ての国民に教育が行き渡り、医療を受けることができるようになり、失業率も減ってきていることは事実だし、国内の貧困層からは圧倒的な支持を受けている。とにかく、とんでもなく型破りで魅力的な大統領が誕生し、中南米を見てきたジャーナリストや学者はチャベスから目が離せなくなっているらしい。ノーベル賞作家のガルシア・マルケスは同じ飛行機に乗り合わせた彼との会話を回想して次のように言っている。
「私は2人のまったく違った男との旅と会話を楽しんだような、奇妙な感覚に襲われた。1人は、国を救う機会に何度もめぐり合わせる強運な男。そしてもう1人は、新たな独裁者として歴史に残るかもしれない詐術師である。」
http://www.diplo.jp/articles00/0008-2.html
http://www.actiblog.com/momoi/16551

ソ連や西ドイツの崩壊に象徴されるように社会主義は人を不幸にするだけで長続きしないということは証明されてしまった感があるが、私は、現状は資本主義でも社会主義でも一部の人間が他の大多数の人間を奴隷化していることに代わりはないと思っている。日本にいるとそのことはなかなか見えないが、多くの国では貧富の差はとてつもなく大きいし、国家間の格差は言わずもがなだ。かつて流行った「世界がもし百人の村だったら」の中では大学教育を受けコンピュータを所有できている人はたったの1%ということになっていた。問題は主義ではなく、国の運営であり、突き詰めれば人である。日本でも近年多くの国営事業が民営化されたが、私はそれが良いことだとは思えない。全ての人に関係する国のインフラを私有企業に任せていいとはどうしても思えないからだ。

そもそも民営化という言葉は英語の「privatization」の訳語だ。「private」という言葉には日本語でいう「民」、つまり、みんなで経営している錯覚に陥るようなあいまいな意味はなく、正しく訳すとすれば「私有化」だろう。ここにも日本特有のソフトな言葉使いが見て取れるが、政府がこういう言葉を盛んに使うとなると意図的な誤訳なのではないかと勘ぐりたくなる。

チャベス大統領の2006年国連演説が下記サイトで読むことができるが、有料だ。購読料は3ヶ月で3千円。ちょっと高いかな…。演説の内容は極めて刺激的だけど。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200609281345494
by katayama_t | 2007-01-12 04:43 | Social | Trackback | Comments(0)
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