ソルジェニーツィンの「収容所群島」を読んだのは大学生の頃だった。その頃すでに過去の作家という感じがしていたが、死去のニュースを見て「ああ、同時代を生きていたのだな」と改めて思い至った(そういえばゴルバチョフ時代に市民権回復のニュースがあったな)。私でさえそう感じるのだから、今の20代の人達は「収容所群島」やフランクルの「夜と霧」などの本を読んでも、まったく別の世界という感じがするのではないだろうか?
この20年ほどの間に世界は大きく動いた。ソ連は崩壊し、ベルリンの壁は崩れた。しかし、人間の本性というのはそう簡単に変わるものではないだろう。最近でもイラクのアブグレイブ刑務所やグァンタナモ米軍基地での拷問が公になったし、映画にもなった梁石日の「闇の子供たち」の話は今現在この世界で起こっていることだ。
人間の負の側面はいつどういう形で表に出てくるのか分からない。この日本だってつい60数年前は戦争していたのだ。今の日本を見る限り信じられないけど。