Katayama Takatoshi Weblog
日本人の勤勉さについて思うこと
牧童さんのリンクをたどって村上春樹氏のインタビュー記事を読んだ。
その中の日本人と戦争について書かれた文章にひっかかる。

----------------------記事から抜粋
 「戦争中、上官から捕虜を殺せと言われたら、ノーとは言えないわけですよね。日本人は戦争でそういうことをやってきた。そのことに対する日本人の本当の自省の念というのは、まだ出てきていないと思うんです」
 これに関連して、村上さんはリー・クアンユー・シンガポール元首相が日本の新聞に寄稿した記事のことを紹介した。元首相によれば、戦争中、シンガポールを占領していた日本人は信じられないほど残酷だった。だが、戦争が終わり、英国人の捕虜となると皆、良心的で懸命に働き、シンガポールの街をきれいに掃除していったという。
 「これは日本人の怖さみたいなものを物語っている話だと思うんですよ。良心的で懸命に街をきれいにする日本人が、ある日、突然、残虐行為を働く人間になってしまう可能性も示している。きっとどの国民にもあるのでしょうが、日本人はそういう面が強いのじゃないかという気がしてしょうがないのです」
----------------------

これを読んで考え込んでしまった。
日本人は勤勉だと言われるが、それは決して良いことばかりではない。

昨年4月に江東区のマンションで起きたOL殺人事件の裁判記録を見ると、星島被告は遺体を切り刻んでトイレに流す作業を淡々と行っていた様子がうかがえる。信じられないほど常軌を逸した行動で普通の神経ではありえないと思うが、一方では逮捕後一貫して容疑を認め、独房に自ら作った祭壇に毎日祈りを捧げ、膨大な量の写経をして、死をもって償いたい、一刻も早く死刑にしてほしいと懇願している。
そして弁護人は次のように言った。
「私はこれまで、数々の刑事事件にかかわってきましたが、本件被告人ほど真摯に反省している犯罪者を見たことがありません。」

これは決して刑を軽くするための芝居などではなく、本当に善良な人間なのだろう。そういう人間がとてつもなく残虐な行為をするから怖いのだ。

星島被告は勤勉で学校の勉強もよくできたらしいが、それは言い換えれば感情を殺してノルマをこなす作業に子どもの頃から慣れていたということではないのか?そうでもなければ何の恨みもない人間の死体を切り刻むなんてとても出来ない行為だ。


少し飛躍するが、以前から大学生を見ていて疑問に思っていたことがある。
それは「どうしてつまらない課題でも真面目にできるのだ?」ということだ。
なぜボイコットしない?

これは真面目で感心だなんて言っている場合ではないのではないか。
つまらない課題をつまらないと感じる心を殺して、何も感じないように自分の感情をコントロールしているのではないか?もしそうならばそのほうがよほど問題なのだ。

そんな話をある信頼しているデザイナーにしたことがある。彼は私の意見に激しく同意し、こう言った。

「僕が学生の頃ポスターを模写するという課題があったけど、とてもつまらないと思ったからポスターをカラーコピーして提出した(笑)。」

すばらしい!!
さすが我が友だ(笑)。
by katayama_t | 2009-02-04 00:07 | Social | Trackback | Comments(2)
Commented by nakahara at 2009-02-20 12:40 x
ごぶさたしてます。

僕の高校では、夏休みに「ノート何冊か分、英単語を書く」という目的を見失いそうになる課題があったのですが、
ひねりのきいた友達が、古いノートの表紙を換えて提出したところ、OKで友達の賢さに感心した覚えがあります。

個人が自由に疑問を持つことを排除したような類の勤勉さを一方通行に美徳としたり、それをもって「日本人全体のあるべき姿」とすると、大きな間違いを真面目に犯して(遂行して)しまいそうで怖いです。
Commented by katayama_t at 2009-02-20 22:15
そうだね。真面目で勤勉な分「一生懸命に間違える」ということをしそうですよね。それにしても「ノート何冊か分、英単語を書く」って…笑えますね。
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