Katayama Takatoshi Weblog
道具のことはプロに聞け
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家の刃物が切れなくなってきたので、研ぐことにした。
以前大工さんの作業場で砥石を外に出しっぱなしにしていたのを見て、「なるほど、こうしておけばいつも湿っていて使いやすいのか」と思い、それをまねして最近ずっと砥石を外に置いていた。中砥は問題なく研げて、「ああ、最初から湿っていると使いやすいなあ」と思ったのだが、仕上げ砥を使ってみるとなんと! 砥石が水に溶けていく…。まったく使い物にならない。人造砥石ってこういうものなんだ…。こりゃあ粉を糊で固めているだけだ。

研ぎの仕上げをさっさと諦めて、先月から滞納していた家賃を払いに大家でもある大工さんの作業場に行く。目の詰まった立派な木材がぞくぞくと届いていて、今は鉋をかけているところ。これから刻むそうだ。

ひとしきり木や道具や木構造の話をしてから砥石のことを棟梁に聞いてみた。

私「砥石は天然砥石を使っているんですか?」

棟梁「いや人造」

私「うちも人造なんですが、外に出していたら仕上げ砥が水に溶けてしまったんですよねえ」

棟梁「ああ、仕上げは天然だよ!! 仕上げは天然!」
「それに、うちはノミを研ぐのに使うような安いのは外に出してあるけど、鉋に使うようなもっといいのは中にしまってあるよ」

私「もっといいの、っていくらくらいのものなんですか?」

棟梁「10万円以上はするよ」

私「そういう砥石はどこで買うんですか?」

棟梁「砥石屋が売りに来るんだ」

私「ああ…、やっぱり」

プロの道具はその辺で普通には売ってないのだ。
実は昨日も同じような体験をした。

授業で使うガラスを切るためにホームセンターでガラス切りを買って練習してみたのだが、どうしてもうまくいかない。何度かやってみて、このまま続けてもうまく行く気がしないので「これは何かコツがあるに違いない」と思って近隣のガラス店にかたっぱしから電話をかけて、職人が電話口に直接出てくるような店を探し、3mm×300mm×300mmのガラス板を注文。今から取りに行くと言って車を飛ばした。行った先はおじさんが一人でやっている小さなガラス店。注文したガラスはすでに切られていたのだが、その場でもっと小さめのサイズを2枚注文して目の前で切ってもらった。

見ていると、まるでカッターナイフで紙を切るように難なく切っていく。私が驚きの声を上げて、「ええ! 何をやってるんですか? 信じられない!!」と言うと、おじさん、切り方を教えてくれた。と言っても何も特別なことはなく、定規をあててカッターナイフのようにただ切るだけ。
「これは熟練が必要なんですか?」と聞くと「いや、器用な人なら最初からできる」という。そう聞いて、「ちょっとやってみていいですか?」と言って、やってみると、自分で練習していた時には全然うまく行かなかったのが、あっさりと綺麗に切れた。

これはどういうことだろう? 何が違うのだろう? と思って「実はさっき自分で練習してみたのですが、全然うまくいかずに、困っていました」と言うと、そのおじさん「ああ、ホームセンターで買ってきた道具じゃ切れないよ」と言う。「見た目はまったく同じでも私たちが使っている道具とはモノが違う。」「ホームセンターでは1本2000円から3000円くらいで売ってるけど、自分たちが使ってるのは1本1万円以上するから」なんてことを言う。

私が、「そういう道具はどこで買うんですか?」と聞くと
「これはガラスの専門業者が扱っているから普通には売っていないよ」という答え。
そりゃないよ、と思っていると、

「これでもホームセンターで売っているものよりはずっと切れるはずだよ。」
と言って、使い古したガラス切りを1本くれた。
カッター部分が小さく減ってしまってもう20年以上使ったのではないかと思われるものだが、帰ってからホームセンターのものと使い比べてみると、確かによく切れる。

なるほど、ガラスのことはガラス屋、ノミや砥石のことは大工、それぞれの専門家に聞かなければ分からない。ホームセンターに売っているのは、しょせん日曜大工程度の素人が使う道具ってことか。
by katayama_t | 2009-04-11 21:39 | Art | Trackback | Comments(4)
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Commented by hana at 2009-04-12 19:29 x
偶然ですね!!私も今度ガラスを使ってみたいと思って、知り合いでガラスを使った彫刻をしている人に、端材を下さいとお願いしていた所です。電話の向こうでカッターは持ってるの?ってきかれて、「昔買ったのがあったかも・・・」といったら「ちょうど新しいの買ったから、古いのあげるよ」って言ってくれました。引き出し探したらやっぱり昔買ったのがあったけど、多分ハンズで買ったちゃちなのが錆び付いていました。私も昔それで切って全然うまく切れなかったのを思い出しました。プロの道具がそんなに特別なものだったとは知らなかったな。
Commented by katayama_t at 2009-04-12 22:08
ホントに偶然ですね。ホームセンターで売っていたガラス切りはガラスの厚みによって種類がありましたが、ガラス職人のおじさんが言うには厚みに関係なく1cm厚のガラスも同じ道具で切るそうです。今度厚いガラスを持参していって切るところを見せてもらおうと思ってます。
Commented by 羽鳥 at 2009-04-14 18:51 x
今ではほとんど使わなくなった‘鰹節削り器’ですが、以前、出入りの大工さんが、自分の鉋の刃と入れ替えてくれました。使い古して仕事にはもう役立たないものなのに、とてもよく削れるんです。玄人の道具は、神様のつかいですね。
Commented by katayama_t at 2009-04-15 12:23
そうなんですよね。10年ほど前、鰹節削り器を買おうと思って、ホームセンターを見たのですが、刃が良くないので買うのをやめたことがあります。
で、どうしたかというと、家にある鉋を鰹節削りに使っています。鉋がはまる台を木で作ってそこに本物の鉋を刃が上になるようにはめ込んで削る。鉋として使う時には台から外すだけ。良く削れるし実に合理的です。きっともっと良い削り器もあるのでしょうけど、安くなければ売れないのでしょう、普通にはみかけませんね。
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