Katayama Takatoshi Weblog
2006年 12月 01日 ( 1 )
アートとレモンスクイーザー
何か作りたいなあと思っていたところ滞在している研究室の教授から、ここにいた成果として何か残していってくれと言われたので、滞在中にモニュメントを制作して設置していくということにした(笑)。アートスクールじゃないし、こんなのでいいのか?と思ったりもしたのだが、どうやら教授も乗り気だ。そこで、ここ数日プランを練りながら模型を作ったりスケッチをしたりしているのだが、大学内にはどうやら作る設備がない。しかし、具体的に形をつめて、図面に起こせば外で作る場所を探すこともできるだろう。
d0094333_22145764.jpg
プランが漠然としていたら場所も探せない。外に置く物なので金属で作るということは最初に決めたが、素材は何を使うのか、大きさはどのくらいか、設置する時に組み立てるのか、あるいは全て溶接にするのか等によって必要な設備が違ってくる。鉄とステンレスでは必要な溶接機の種類も違うし、同じ鉄でも無垢の鉄を使うか薄板を箱形に溶接するかによって必要な設備も違う。また、可動部分があるかないかによっても工法が変わってくる。それにペイントを施すか、あるいはステンレスのヘヤーラインにするか、またはサンドブラストにするか、またはファインステンレスにするかという違いでも形に影響が出る。

物を作るときにはこのように、素材やテクニックなどの専門知識と、視覚的にもクライアントの組織イメージの上でも設置場所に合った形を作る感性と、模型などでそれを表現する能力、またどの程度の強度が必要か直感的に分かるだけの経験と、コスト面なども含めてそれらを統合できるバランス感覚が必要だ。そう考えながら、これはデザインだと言えばデザインとして通用するのかな…とふと思った。というのもつい最近そんな話をしたからだ。

先日インターフェースデザインを専門とする大学教授とアートとデザインの違いについて話をしていた。彼が言うには、デザインの場合は工業製品なのでデザイナーは図面を描くだけで自分では作らないけれど、アートの場合は自分の手で1つだけのオリジナル作品を作るということが重要なのではないか、と言う。

アートの世界にいる人は世の中にはそうではないアートが沢山あるし、例えばアメリカのアースワークに見られるような巨大な土木工事をアーティストが重機を操って自分自身で行うことにはほとんど意味がないだろうことも分かる。また、ドナルド・ジャッドなどのミニマルアートに至っては自分で作らないということがコンセプトの重要な部分を占めているということもあるので、自分で作るか否かということは、アートであるか否かということとは関係ないということは自明だが、一般的な認識では彼の言うように自分で丹誠込めて作った個人的な作品がアートになるのだということになっているのだろう。
d0094333_22492065.jpg

そもそもアートとは何かという定義がなされていない…というか定義(常識)に疑問を投げかけることがアートの一側面でもあるので、それは常に更新されていくものなのだろう。なんというか…、確かに存在するけれど、捕まえることはできないというような種類のものだし、言葉で論じるようなものではなく、それは観て、触って、感じるものだ。

彼にそのように具体例を出しながら自分で作るか否かはポイントじゃないという説明をしたら、ではデザインとの違いはどこにあるのか?と言う。私は、それはたぶん明確には無い、と言って、次に、例えばデザイン的な手法で作られていて、実際にデザインと認識されているものの中にも実態はアートだというものがあるのではないかと言い、ALESSIのレモン絞り器を引き合いに出した。フィリップ・スタルク氏のデザインでMOMA(ニューヨーク近代美術館)のパーマネントコレクションにもなっているものだ。これはレモン絞り器として売られているが、実際には汁が飛び散ってうまくは絞れないし、限定品で金メッキを施したものまである。その説明書には「これはレモン絞り器として使ってはならない」とあるらしい(笑)。ステンレス製のものを買った人でもたぶん多くの人は台所ではなく、居間やデスクトップに置いているのではないだろうか。

d0094333_22152568.jpgあれをどう思いますか?と質問したら、顔をしかめて、ああいうのを有名デザイナーの作品だといってメディアが持ち上げるから学生が真似をして困っている。こういう学生をどう指導すればいいのか、これはほんとに大問題だ、と言った(笑)。
あれはデザインじゃないと言ったらどうですか?と言うと、でもスタルク氏はいつも自分はデザイナーだ、自分の作る物はデザインだと口にしてるし、ほんとに困る、とのことだった。

教授が困ってる顔が目に浮かぶようで楽しかったが、あれが例えばデザイナーの作品じゃなくてアーティストの作品だったとしたらこんなにも話題にはならないし、売れもしなかっただろうと考えると、くっそう、アートってのはどうしたって金にはならないのだなと思ってあまり楽しくなかった。

それにしても、韓国で作品を作ることになるとは全く思ってもみなかった。日本にいるとき美術関係者に韓国の大学に半年間出張に行くと言ったらそれを聞いた人は100パーセント美術大学へ作品制作の為に行くと思ったみたいで、いくらそうじゃない全くの誤解だ、美術とは無縁のところへ行くのだ、そもそも自分は日本においても美術大学とは何の接点もないのだと言っても、そんなこと言ったって絶対何か作って帰ってくるよ、と取り合ってもらえない。そんなことはあり得ない。わざわざ美術と最も縁遠い場所を設定されて行くことになったのだ、行きたくて行くわけでもない、と自分の置かれている状況を説明していたのだが、どう言ってみたところで私が何も制作せずに帰ってくるとはやはり誰も信じてくれなかった。

しかし結果的には皆の言う通りになってしまった…。こうしてみると自分では自分がどういう人間なのかほんとうには分かっていないのかも知れない。自分が思っている自分と他人から見た自分はたぶん大きくずれているのだ。認めたくはないが他人のほうがよく見えている部分もひょっとしたらあるのかもしれない。

*上の写真は以下のサイトから拝借しました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Spiral-jetty-from-rozel-point.png
http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection/item/expand/S_77_1047_X.html
http://www.nikkei.co.jp/style/one/0012/body2.html
by katayama_t | 2006-12-01 22:19 | Art | Trackback | Comments(0)


記録すること。すべて過ぎ去ってしまう前に。
by katayama_t
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
2018年 08月
2018年 07月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2016年 10月
2016年 08月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 08月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
Link
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


View my profile