Katayama Takatoshi Weblog
カテゴリ:Music( 12 )
久しぶりにレコードを聴く
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早めに帰ってきたので久しぶりにフルトヴェングラーのベートーベンを聴いた。フルトヴェングラーのベートーヴェンだけでも数えてみるとレコードが17枚ある。その上CDも何枚かあるはずなので20枚以上あるだろう。マニアというには程遠いが、よくもまあこれだけ集めたものだとは思う。

中でもベルリンフィル1942年録音の9番は同じ演奏のものがレーベル違いでunicorn、fontana、turnabout、everestと4種類ある。

この演奏を初めて聞いたのは20才くらいの時だったと思う。高田馬場の名曲喫茶でたまたまかかっていたのが42年の第9だった。それまではフルトヴェングラーの第9は定番のバイロイト祝祭管の51年録音を聞いていたのだが、42年のものはそれとは大きく異なっていた。音質こそ悪いものの、音楽の密度といい、緊張感といい、圧倒的だった。いたく感動して、店の人に「この演奏は何ですか?」と聞いたのが事の始まり。

それからこの録音を探して最初に買ったのがfontana盤。これは同じ演奏だとは分かるものの音質が酷すぎて聞くに堪えなかった(ラジオ放送を録音したものだとの噂)。レコードに詳しい友人から古い録音のものはマスターテープが劣化するので、できるだけ古いプレスのレコードを買うと良いという話を聞き、次に探し出したのがイギリスのunicorn盤。2枚組で15000円也。高すぎるだろ、と思ったがこのチャンスを逃したら次にいつ出会えるかわからないので購入。こちらの音質はfontanaとは比べものにならないほど良いが、家で聴いてもたいして感動しない。あの名曲喫茶で聴いた音楽はもっとずっと良かったような気がして(場所と機材、自分の身体の状態の違いが大きいだろうことは薄々感じてはいたが…)、それからeverest盤を買い、まだ満足できず、最後に購入したのがturnabout盤。これは数年前に韓国の中古レコード店で買った。値段は30000ウォン。日本円で2000円ちょっとだと思う(安い!)。42年盤は見つけたらとりあえず買うことにしていただけで、たいして期待はしていなかったもののこのturnabout盤はとても良い。unicorn盤よりも若干クリアな印象。いつか一人きりで大きな音でこれをかけてみようと思う。でもたぶんそれでもあの時名曲喫茶で聞いたほどの感動は得られないだろう。

わかっている。フルトヴェングラーの言うように、音楽とはその時と場所で新たに産まれる一度きりのものなのだ。演奏する側にとっても聞く側にとってもそれは同じ。

それにしても42年といえば戦争まっさかりである。フルトヴェングラーはいったい何を思って演奏していたのだろう? こういう鬼気迫る演奏は現代ではとても無理だろうと思う。
by katayama_t | 2012-05-22 23:49 | Music | Trackback | Comments(0)
ミューザ川崎天井崩落
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ミューザ川崎が地震でこんなことになっているとは今日まで知らなかった。あの程度の揺れでこの大惨事とは、明らかに手抜き工事。9月まで全ての講演をキャンセルだそう…。
しかし、客席に人がいなくて良かった。作品が無事なのかとても心配だが。
by katayama_t | 2011-04-17 22:26 | Music | Trackback | Comments(0)
DVD [ベルリン・フィルと第三帝国 ドイツ帝国オーケストラ]
d0094333_024486.jpg戦時中のベルリン・フィルはドイツ第三帝国より活動資金が供出されていたため、必然的に国家体制翼賛の役割を背負わざるを得なかった。個々の音楽家たちは政治に疎く、ただ純粋にひたすら良い音楽を奏でることに心血を注いでいただけなのだが、それは結果としてドイツの威信を高める役割を担っていた。
このフィルムは当時を知る関係者たちの多くの証言によってその頃の状況をありありと浮かび上がらせ、芸術がプロバガンダに利用されていく様子を克明に記録する。

驚くのは終戦まで演奏活動が途絶えることなく続き、敗戦色が濃くなってきてドイツが空襲されている最中もコンサートは開かれていたということだ。常にチケットは完売。空襲警報が出ると一時中断し、解除されたらまた集まって演奏を始めた。途中停電になってもそのまま演奏を続けたという。命の危険を冒してまで皆音楽を聞きに来たのだ。

音楽の力というのは恐ろしい。

これもフルトヴェングラーという不世出の天才指揮者がいたからなのだろう。
楽団員たちも政治に疎いとはいえ、ユダヤ人の楽団員が退団させられたり、ユダヤ人作曲家の音楽が演奏禁止になったりして、ナチスはおかしいと思っていたが、ベルリン・フィルとフルトヴェングラーという最高の組み合わせで演奏できるという誘惑を振り払って退団するようなことはできなかった。
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当時のコンサートマスターだったHans Bastiaanが戦後、野戦病院で多くの負傷者を前に演奏したときに、「自分たちがどれほど恵まれていたのかということを突然理解し、恥ずかしい気持ちでいっぱいになった」そして「空襲の時になぜ自分たちが良い演奏をしなければならなかったのかということも分かった気がした」という言葉が印象的だった。

それにしても、ナチス時代をタブー視せず、こういうフィルムを125周年フェスティバルの記念式典で上映するというベルリン・フィルというのは、いったい…。

監督の「エンリケ・サンチェス・ランチ」は、傑作ドキュメンタリー「ベルリン・フィルと子どもたち」を撮った監督。こちらもすばらしい。
by katayama_t | 2008-12-09 00:25 | Music | Trackback | Comments(0)
Coccoを聞く
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この3日間車の中で繰り返しCoccoを聞いている。
amazonの中古で1円と300円だったのでCDを2枚買ったのだ。

ずっと気になっていた歌手ではあったのだが、ちゃんと聞くこともなくきていた。歌手活動を休止したり、絵本を出したりしたのもずっと気になっていて、いつかは歌も聞いて、絵本も見てみたいと思っていた。

それが先日何のきっかけだったかYouTubeで「Blue Bird」を聞いて、「陽の照りながら雨の降る」を聞いて、「ジュゴンの見える丘」を聞いて、完全にハマッた。

それから即amazonで古いCDを買い、聞き込んでいる。
全体的に編曲が陳腐で、古くさい歌謡曲仕上がりになっているが、「強く儚い者たち」や「Raining」などの歌は、あまり編曲がうるさくないので、その歌詞の魅力と相まってとても美しい曲に仕上がっている。

2006年に歌手活動を再開して昨年出たアルバムはamazonのカスタマーズレビューを見ると昔のような「血まみれで痛々しい」感じは消えているようで賛否両論あるようだが、たぶん「買い」だ。

中古で1154円。今日注文しようと思う。
by katayama_t | 2008-12-08 07:28 | Music | Trackback | Comments(2)
Steve Reich “Music for 18 Musicians”
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7月4日(金)午後10:30からNHK教育で芸術劇場 “スティーブ・ライヒの世界”が放送される。

http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2008-07-04&ch=31&eid=11043

http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2008-07-04&ch=31&eid=11044

スティーブ・ライヒは言わずと知れたミニマルミュージックの代表的な音楽家だが、演奏回数が少なくその音楽が実際に演奏されるところはなかなか観られない。

以前ローザスがライヒの「ドラミング」で踊った舞台を観たときに「ドラミング」という音楽はこんなに良いものだったのかと初めて気がついた。アフリカ音楽の影響が色濃いこの作品は本来、演奏している様子や、太鼓に合わせて踊っている様子を含めて「体験」するものなのではないかと感じた。

高校生の時に初めてライヒの音楽に触れたとき、これを人間が演奏しているというのが信じられなかった。どうしてコンピュータを使わない? と思った(そう思いなら答えはすでに自分の中にあったが)。ライヒの音楽はライブでこそその真価を発揮するのではないかと思う。人間の意識とは何か、人と人との新たな関係とはどうあるべきなのか、など多くのことを考えさせられる。

4日は5月に東京オペラシティで行われた演奏会の録画から、「ダニエル・バリエーションズ」と「18人の音楽家のための音楽」が放映される。特に「18人の音楽家のための音楽」はとても重要な作品だ。この演奏の様子がテレビとはいえ観ることができるのはとても幸福だ。
by katayama_t | 2008-07-02 06:50 | Music | Trackback | Comments(0)
「うさぎ!」
小沢健二の小説「うさぎ!」を読んだ。
昨年末に友人から送られてきた雑誌連載のコピーだ。作品制作に集中したかったので今まで封印していたのだが、個展も終わったことだし暇を見つけて少しずつ読んだ。

物語は「うさぎ」と「きらら」と「クィル」という3人の子ども達から見た現代の世界が描かれている。ほとんど現実とリンクしていて、グローバリゼーションのことや、民営化(私営化)のことや、貧富の差の拡大や、アメリカの炭疽菌騒ぎや、チャベス大統領の改革や、フリージャーナリストの暗殺や、なぜ原爆は8月6日に落とされたのかとか、プラスチックリサイクルの嘘や、環境汚染などなど、普段巧妙に隠されている真実が童話のような語り口でわかりやすく単純に語られている。

例えばこなふうだ。
-----------------「うさぎ!」第2話から
食べ物がどのくらいの距離を運ばれてきたのか、人は考えることもできなくなっているのか。ある国では、もし、その土地でとれた食べ物を国の人たちが食べたら、家庭でつかうエネルギーを、二十パーセント節約したのと同じことになるという。

それなのにその国では、「土地のものを食べよう」とか、「食べ物の無駄をなくそう」ではなくて、「夏はネクタイをするな」という騒ぎになったらしい。笑えるが、笑えない。笑ってはいけないと思う。みんな純粋に、「何かしたい」と思っているのだ。

「レジで払う値段が安い」野菜が、なぜ安いか、氷が溶けてしまっている、北極の衛星写真を見れば、わかるはずなのだ。
-----------------

これらのことはテキトーに書かれているのではない。各号の最後には「興味がある人のために」という項目を設けて参考文献がずらりと並ぶ。

小沢健二といえば十数年前、少女達の王子様だった。「LIFE」というアルバムが大ヒットしてテレビにもたくさん出ていたが、その後ぱったりと出てこなくなった。
たまに思い出したようにアルバムを発表してはいたが、「LIFE」ほどのインパクトは無く、この人は今どうしているのだろうと思っていたが、「うさぎ!」を読んで、地道に活動していたのだなと思って嬉しくなった。

私の車にはずっと「LIFE」がつんであって、この幸福感と希望に満ちたアルバムをいまでも時々聴いている。
by katayama_t | 2008-01-31 01:40 | Music | Trackback | Comments(2)
フルトヴェングラー
先週の金曜と今朝、NHK-FMでフルトヴェングラーの音楽がかかっていた。一日前のミュージックプラザ第1部の再放送だ。先週はベートーベンの3番をやっていて、今日は9番!
51年録音のバイロイト祝祭管弦楽団。

もうこれは「すごい」としか言いようがない。朝から胸が高鳴りっぱなしだ。
大げさなようだが人類が残したものの中で最上のものの1つだと思う。フルトヴェングラーの第九はこのほかに42年録音のベルリンフィルも有名で私はバイロイトよりもこっちのほうが演奏は一枚上だと思うが、なにしろ戦時中だし音質が悪いのでバイロイトの方が決定版と言われるのはわかる。特に最近はデジタル技術によるノイズリダクションのおかげで、昔聞いたベールがかかったような演奏とは比べものにならないような迫力のある音質で聴くことが出来る。例えるとミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画の修復前と修復後くらい違う(この例えは通じるかな?)。

芸術家の質は良くも悪くも生きた時代に左右される。こういう指揮者はもう2度と現れないだろう。フルトヴェングラー自身は「音楽はその場所と時間に常に新しく生まれる一度限りのものだ」という信念を持っていたようだが、よくぞ録音を残してくれたと思う。
by katayama_t | 2007-12-07 12:57 | Music | Trackback | Comments(2)
ロストロポーヴィチの死去
ロストロポーヴィッチが死んだ。80歳だった。バーンスタインが亡くなったときにも感じたがこれで確実に1つの時代が終わったという感じがする。

ロストロポーヴィッチというのはソルジェニーツィンやショスタコーヴィチらと親交のあった世界的なチョロ奏者だ。当然自らも迫害されて政府から演奏活動を禁止され、74年に出国、78年にはソ連政府から市民権を剥奪され、90年になってゴルバチョフ政権下でようやく回復した。

彼はチェロ奏者として名高いが、実は指揮者としても活躍している。
私はチェロ奏者としてのロストロよりも指揮者としてのロストロのほうがむしろ好きだ。彼のチェロの音色はみずみずしく明るく透き通っているが、チェロという楽器はパブロ・カザルスのようなドスのきいた渋い音色の方が似合っているのではないかと私は思う。ところが指揮者としてのロストロはどちらかというと渋く地味な演奏で独特のすごみがある。

ロストロの指揮者としての演奏を最初に聞いたのはショスタコの5番だ。それまでバーンスタインの演奏を気に入って聞いていたのだが、バーンスタインとは180度違う解釈の演奏を聴いて、とてもショックを受けて一気にファンになった。バーンスタインの演奏は良くできたエンターテイメントだが、ロストロの演奏はショスタコの交響曲を通して当時のソ連における芸術家の極度に抑圧された状況を映し出しているようだった。私はその演奏を聞いてからバーンスタインの演奏が軽々しく感じられてもう聞けなくなってしまった。

いずれにせよ、みんな死んでしまった。ロストロもショスタコもバーンスタインもベリオもクセナキスもケージも20世紀末に活躍した音楽家は軒並み死んだ。ああ、まだブーレーズは生きているか…。でも最近まったく話題に上らないな。今や音楽家も皆ポストモダンの世代になって音楽が軽くなった。映画音楽を作ってるくらいが似合っているような作曲家ばかりだ。巨匠と言えるような人がいない。美術も同様で私もその中の1人だが、少し、…いや、とても寂しい。まあ、これも時代だな。

まてよ、まだアーノンクールがいる!
彼は遅れてきた巨匠だ。私たち現代人は良くも悪くもバランスが取れているが、アーノンクールは同時代人とは思えないほどアンバランスだ。彼の演奏する「四季」なんて激しすぎて聞けたもんじゃないが、モーツァルトのレクイエムなどは一度聴いたら虜になる。彼はきっと何かを強烈に信じているんだ。神が死んだこの現代で何かを信じることができるというのもまた才能だな。
by katayama_t | 2007-04-28 00:36 | Music | Trackback | Comments(0)
初めて買ったCD
d0094333_23192719.jpgルチアーノ・ベリオという現代作曲家がいる。私が初めてこの作曲家の曲を聴いたのは20年以上も昔になるが、その時の衝撃と感動は今でも鮮明に覚えている。当時、病気の治療で長期入院を余儀なくされていた私は病院のベッドでラジオからこの作曲家に出会った。どこかの音楽祭(ドナウエッシンゲンか?)の録音テープの抜粋で曲名は「ボーチ」「コーロ」「フォークソングス」だった。

現代音楽というと冷たくて情感を排したノイジーな音楽というイメージがあるが、初めて聞くベリオの音楽はそれとはまったく違っていた。うまく説明できないが、イタリア人が現代音楽をやるとこうなるのか、というような情感と宇宙の果てまで繋がっているような透明感を併せ持っている音楽だった。私は心の底から感動した。当時NHK-FMの「現代の音楽」は船山隆さんがパーソナリティーを務めていたが、船山さんも私と同じように感動していたらしく、聴き終わった後に感極まった声で、「いやあ…、すばらしいですねえ! ほんとうにすばらしい。」「う〜ん、いやあ…すばらしい!感動しました。」なんてことしか言ってくれなくて全然解説になっていなかった(笑)。

船山隆さんは音楽評論家として名高いが、当時東京芸大で教えていたことからもわかるように、感情だけでものを言うようなタイプの評論家ではなく、豊富な知識を武器に理詰めでものを考えるタイプで、どちらかというと評論家というよりは学者だ。その船山さんが「感動した」なんて主観的な言葉を使ってしまうくらいにこの時の演奏はすばらしかった。

私はそれから数ヶ月後にガリガリに痩せて退院し、ふらつく足で真っ先にレコード店に向かった。そこでレコードカタログを繰ったのだが、なんとベリオのレコードは当時一枚も発売されていなかった。正確に言うと発売はされたことがあったが、全て廃盤になっていた。

それから私のベリオ遍歴が始まったのだ…。

まず、中古レコード店を回りベリオを探すが見つからず、次にレコードの置いてある図書館に行き、そこで初めてベリオのレコードに出会った。「うわっ、やった!」と思ったが、家に帰って聴いてみると期待したほどのものではなく、廃盤になるのもしかたないと思えるようなものだった。その後あちこちの図書館に行ってはレコードを借りてテープに録り、同時にNHK-FMの「現代の音楽」も毎週テープに録るようになった。

それから数年後。ついにベリオのレコードが発売されることになった。フランス国立管弦楽団、ピエール・ブーレーズ指揮の「シンフォニア」だ。当時はちょうどCDという新しいメディアが出だした頃で、レコードとCDの両方がリリースされていた。私はCDプレーヤーを持っていなかったのだが、迷った末に、これからはCDの時代だろうと思ってCDを買った。

だが、CDを買ったのはいいが、プレーヤーなんて高価で買えず、しばらくはCDのディスクをケースから出して眺めるだけの日々を過ごし、ようやく半年後に中古プレーヤーを手に入れて聴くことができた。ようやく聴くことができたのだが、それを聴いてもやはり感動するような演奏じゃなかった。良い音楽だとは思うが、感動はない。それからというものベリオのCDが発売されるたびに購入し、CD屋に行くと必ず現代音楽の棚をチェックしている。(後にこの頃のCDプレーヤに問題があったことを知る。ブーレーズのシンフォニアは今ではすばらしい演奏だと思っている。)

今ではすっかりベリオコレクターになり、CDとレコードを合わせると20枚くらいはある。現在日本で手に入るものは全て持っていると思う。それでもやはり最初に聴いたときの感動は無い。入院中で神経が研ぎ澄まされていたからあんなに感動したのか、それともあの時の演奏がずば抜けてすばらしかったのか分からないが、すばらしい作曲家であることは確かなのでこれからも買い続けるだろう。そのうちにとんでもなく良い演奏にあたるかもしれない。

事実、現代音楽の演奏は年を追うごとに良くなってきている。指揮者や演奏者の感性が音楽に追いついて行くのだろう。そのかわりにベートーベンやブラームスなどの重厚な音楽はだんだん軽くなってつまらなくなってきている。

例えばエサ=ペッカ・サロネンという1958年生まれでフィンランド出身の指揮者がいるが、94年に発売されたオリヴィエ・メシアン作曲のトゥーランガリーラ交響曲は当時としてはすばらしい演奏だった。現代音楽の良いCDがまだ少なかった当時、それまで発売されていた演奏とは一線を画したような目の覚めるような演奏で、ついに「現代曲をどう解釈するか」ではなく、自分の音楽として演奏できる演奏者が出てきたのだと思って感慨深かった。今までの演奏は難解な音楽を如何に捉え、どう表現するかということに苦心していたのに対し、サロネンはそんなことは考えず、自分の感性の赴くまま苦もなく演奏しているように聞こえた。

ところが、数年後に同じサロネンのベートーベンをラジオで聴いたときには、へたくそで構成力もなく聴くに堪えない演奏だったので驚いた。あんな酷いベートーベンは聴いたことがない。現代音楽もクラシックの流れの中に位置づけられるが、美術と同じように古典と現代の間には安易に同じ分野に括れないほどの溝がある。

作曲者は自分が作曲した音楽でも全てを捉えられているわけではないだろう。創造とはそういうものだ。音楽の初演はたいていつまらない演奏だということからも分かるように曲が書かれてから良い演奏が行われるまでには少なくとも数年は待たなければならない。特に時代を先取りしたような音楽の場合はなおさらだ。
ベリオは残念ながら2003年に78歳で亡くなったが、これからどんな演奏が出てくるのか楽しみである。
by katayama_t | 2007-03-12 23:20 | Music | Trackback | Comments(0)
昔の音楽を聴く
d0094333_3281714.jpgアルバム名:No Pussyfooting
アーティスト:FRIPP&ENO
オリジナル版発売日:1973/11

曲目
1. Heavenly Music Corporation 20.55
2. Swastika Girls 18.43


キング・クリムゾンのロバート・フリップと元ロキシー・ミュージックのブライアン・イーノがコラボレーションした実験ユニットの記念すべきデビュー作。この後FRIPP&ENOで3枚のアルバムをリリースするが、この第1作を越えるものはできなかった。と私は思う。

残念ながら現在は在庫切れで入手が困難なようだ。amazonで中古品を見たら39800円というバカみたいな値段がついていた。ちなみに私は1900円で購入した。

韓国に来てから音楽を聴く機会が多くなった。日本では車の中くらいしか音楽を聴く時間が持てないが、静かな音楽はロードノイズにかき消されてしまうので、必然的にリズミカルなロックやポップミュージックが多くなる。ジョン・ゾーンのような爆音ノイズミュージックも聴けることは聴けるが、信号で止まったときに隣の車から不審な目で見られることを覚悟しなければならない。こちらでは一人暮らしだし日本にいる時のような雑用が少ないので音楽をゆっくり聴く機会もある。ちなみにテレビは70チャンネルくらい映るが日本と同じでくだらない番組ばかりでつまらない。

日本でiTunesにたくさん音楽を入れてきたのだが、それでも「ああ、あれを入れてくれば良かった」と思うことが多く、その中でもすごく聴きたくなって迷った末にネットで中古品を購入して日本から送ってもらったものの1つがこれだ。日本に帰ればあるのだが、レコードしか持っていないし、この機会にCDを買っても良いと思ったのだ。

このアルバムの発売年は1973年、今から33年前になるが、今でも古さを感じずに聴くことができる。ポップミュージックの場合は当時の流行が鼻について聴くに堪えない場合もあるし、初期のシンセサイザーミュージックも、それが可能だというだけの理由でグリッサンドを多用したりしていて聴いていて恥ずかしくなることもあるが、これは真摯に音楽に向き合っている姿勢が心地よい。私はこれを聴くと必ず眠くなって聴き終わる前に寝てしまうこともよくあるが、そのくらい聴いていて気持ちがいい。

実はこれと一緒に昔のキング・クリムゾンのアルバムも数枚買った。「Island」「Larks Tongue In Aspic」「Starless And Bible Black」「Red」の4枚だ。レコードは持っているのでCDは買うまいと思っていたのだが、ついに買ってしまったという感じだ。高校生の頃によく聴いていた音楽だがたまに聴きたくなる。これもやはり30年以上も昔の音楽だが、今聴いても実にすばらしい音楽だと思う。

今まで聴いてきた音楽の中でベストテンを挙げるとしたら、クラシックや現代音楽も含めてその多くは20歳前後で出会った音楽で、それ以降それを越えるものに出会っていないが、それは若い感性で出会ったからで、歳をとって感性が錆び付いているのか、それともその音楽がほんとうにすばらしくてそれを越えるものが世の中に無いのかが今ひとつわからない。

でも考えてみれば若い頃に出会った音楽といってもその頃でもすでに昔の音楽になっていたわけで、クリムゾンにしても10年近いタイムラグがあるし、クラシック音楽なんて言ったらはるか遠い昔だ。若い頃に昔の音楽のほとんどを聴いてしまったとしたら、それから出会う音楽というのはたかだか30年くらいの間に発売されたものだけだから、それほど感動作に出会わないのも当然なのかもしれない。過去の音楽のほとんどを聴いたなんてことはあるわけないけど、有名なものは聴いているし、すばらしいものはたいてい有名なのだ。

そんなわけで、私は現代社会で生活をしながら大昔の音楽を聴いているってわけだが、ホントにいいのか?こんなので?とも思っている。
今現在もすばらしい音楽が生み出されているのではないかという気がしてならないのだ。誰か知っていたら教えてくれ。
by katayama_t | 2006-12-15 04:31 | Music | Trackback | Comments(4)


記録すること。すべて過ぎ去ってしまう前に。
by katayama_t
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